2020
1月が終わり、やっと年を越した実感が湧いてきたこともあり
去年の年末に書ききれなかった物を今更書いている 2020…
よかった本
『A子さんの恋人』7巻
2014年からハルタで連載、今年堂々完結と言った感じの本作
胸が痛くなるのでいつも目を細めておそるおそる読んでいて、正直まだ向き合うことができてない みんなはどうですか?
『砂丘律』
ずっと買う機会を逃していたが、たまたま書店で見かけて購入
中東在住の歌人による、19~27歳までに発表した410首を収録した歌集
アラビアに雪降らぬゆえただ一語ثلج(サルジュ)と呼ばれる雪も氷も
砂漠を歩くと、関係がこじれてもう話せなくなってしまった人と、
死んだ人と、何がちがうんだろって思う。
『暴力の哲学』
この本に限らず、河出書房新社の(シリーズ道徳の系譜)には気になっている本が多い 現在ではほぼ品切れ重版予定なしのため中古価格が高騰しているので『賭博/偶然の哲学』だけでも文庫化して欲しい・・・
『暇と退屈の倫理学』
去年は家にいる時間が多くなった(さほど以前と変わらないが)ため、読み直した一冊
帯にもあるように「生きることはバラで飾られねばならない」という言葉は大事にしている。ついついパンのことだけ考えてしまうので・・・
『雑貨の終わり』
西荻窪で雑貨店『FALL』を営む店主の雑貨にまつわるエッセー モノと雑貨の境界線が曖昧になり、とてつもないスピードで雑貨として飲みこまれ消費されていく”雑貨化する社会"のなかで、雑貨とは何か?を考え続ける店主の姿には憧れてしまう
すべての雑貨(前作もすばらしいです)
よかった曲
『ナイスポーズ』/ RYUTist
柴田聡子さんが楽曲提供したこの曲 メロディの素晴らしさたるや!
まさにアイドルがアイドルであるための、一筋の光のようなアルバム
蓮沼執太フィルの配信ライブに出ていたRYUTistを知人と観ている最中、こんなようなことを熱心に喋っているとかなり引かれたので悲しかった
あとスカートの『アナザー・ストーリー』は本当にいいアルバムで、すでに何回も繰り返し聴いている 昔住んでいた部屋のことなどを思い出したりしてしまう
あとはこの辺りをよく聴いていた気がする
あとは友人から裏ルートで入手した(本当にありがとうございました)、
John Gastroの音源をよく聴いていた このタイミングで聴く『生活』には本当にくらってしまう
"生活はナイスか?"
よかった映画
『仁義なき戦い』シリーズ
知人に勧められていたので、五月の連休で見ることに。
終戦後の広島・呉を舞台に暴力団同士の抗争による暴力が題名どおり"仁義なき"まま拡大していく様がテンポよく描かれていて(チェンソーマンさながらにどんどん登場人物が死んでいってしまう)、おもしれ〜…とシリーズを一気に見てしまった(3回程みた)
『暴力の哲学』にあるように、”暴力に抵抗するには「暴力はいけません」と拒絶するのではなく、(暴力の内部から)別の種類の暴力を行使せざるを得ない”
というテーマが「戦後史に対して強い問題意識を持っていた」という深作欣二の手によって一貫して提示されていたように思う。
ちなみに、山守組の組長を演じる金子信雄がミルクボーイ内海にかなり似ていて驚いた… おすすめです。
『はちどり』
11月に下高井戸シネマでギリギリ観られた『はちどり』
韓国のキム・ボラ監督の初長編作品で監督自身の経験を基に作られた本作。
(はちどりの前日譚的な短編『リコーダーのテスト』https://youtu.be/v8sKxB2DUT8)
1990年代の韓国で、14歳の少女ウニ(パク・ジフ)は、何百もの世帯が暮らす無機質な姿をした集合団地で両親、姉、兄と共に生活している。思春期を迎え、大人の世界への興味も持ち始めていたウニは、学校にあまりなじめず、別の学校に通う親友と悪さをしたり、男子生徒や後輩の女の子とデートをしたりして過ごしていた。ウニの両親は、朝から晩まで小さな店を切り盛りし、厳格な父は子供たちに学歴や世間体を求めるばかりで、彼らの心の動きと向き合う余裕がない。ウニは、自分に無関心な大人たちに囲まれ、どこか孤独な思いを抱えていた。そんななか、初めて自分の人生を気にかけてくれる大人に出会う。
1994年の韓国・ソウルを舞台に、88年に開催されたオリンピックのために進んだ、急速な経済成長の後に生まれた、社会の歪みのようなものが中学生のウニの日常を通して精緻に描かれている。
この映画では、様々な主題を扱っているが、個人的には”まなざし”が一番気になるテーマで、劇中何度も映し出される視線の描写が印象的だった。
精神科医師・宮地尚子のエッセー 『傷を愛せるか』で他人に対するまなざしについて書かれていたことを思い出す。
"目撃する。目を凝らす。見つめる。見据える。見通す。見極める。見届ける。「見守る」ほどの力や度量は、いつまでももてないだろうが、それでいいのだ。"「なにもできなくても」
劇中に立ち退きを求められた住民に対して「かわいそう」というウニに、塾講師のヨンジの「理不尽なことが多いわよね、でも、むやみに同情できない 知らないから」というシーンがある。同情することは簡単であるが、見つめ続けることは本当に難しい。
チヂミを食べているウニを見つめる母親のように、崩れた橋を見つめるウニのように、ただまなざしを向け続けること。
"キム・ボラはやさしい。決定的にやさしい。世界を救うからやさしいのではない。世界をただ見つめているだけだからやさしいのである。"「A PEOPLE / CULTURE / MOVIE」
どこまでも完璧な映画 次の作品が気になります*1
ハマったもの
去年あたりから気になっていたが、ついに手を出してしまったのが競馬
素人目から見ても近年稀に見る名馬揃いの一年だったように思う コントレイル・デアリングタクト・アーモンドアイ・グランアレグリア・クロノジェネシス...
血統・馬場適性・前走の内容・脚質・調教・枠順・騎手・厩舎・レース傾向・馬場状態・パドックからタカモト式にみられるようなサイン馬券などのオカルトじみたものまで、様々な予想ファクターを用いて、ほぼ無限に広がる可能性の中に自らを投げ入れ、信じたものに賭すという行為はあまりにも楽しい。これはやめられなくなるのもうなずける…
「六さんは競馬を人生の比喩だと思っていたが、それは間違いなのだ。人生を、競馬の比喩だと思わなければならないのだ」寺山修司『馬敗れて草原あり』
何年か前に砂丘を歩いている時に「今、ここにいる実感」のようなものをはじめて感じたことがあった。その実感が何かを賭している瞬間にも感じられる気がした。
2020年はあまりにも勝てなかったので年末の東京大賞典を予想だけして観ていたら3連単的中(125倍)していてガックリきてしまった。こういうことも含め楽しいのでみんなもほどほどにやってみてください*2
最後に去年いちばん気になったお笑いコンビ カナメストーン
今年もよろしくお願いします !
*1:2021年2月現在もユーロスペースで観られるみたいです
*2:全く関係ないけどUNIQLO Uのデザイナーと2020年のリーディングジョッキー(クリストフ・ルメール)は同姓同名でした
20180502
一日中雨が降っていた あやめの花がもう咲いてるらしい
田山花袋の田舎教師をずっと読んでるけど一向に進まない あんまりにも現実がそのまま描かれてるから 日本の自然主義文学はフランスのエミール・ゾラみたいにはいかなかったとのこと 私小説に矮小化したとある 確かにそんな印象がある
反自然主義派でも『余裕派』は名前がすでにかっこいい 「人生に余裕を持って望み、高踏的な見方で物事を捉える(低廻趣味的)な見方をする」らしい もし自分がこの時代のもの書きだったらあこがれるけど嫌ってそう 土のにおいがする方が本質に近いとかいって だから自然主義派、というか田山花袋に異様に惹かれるのはこのことが心のどっかにあるからじゃないかなと思った あと平方二寸のインタビューと 田舎ものの悲しい性なのか
このままではほんとうにやばい 毎日自分から新しい違うことをやっていかないと沈んでいくだけという気分になった ほんとよくわかんないな